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  田崎健太Kenta Tazaki......tazaki@liberdade.com
1968年3月13日京都市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部など を経て、1999年末に退社。サッカー、ハンドボール、野球などスポーツを中心にノンフィクションを 手がける。 著書に『cuba ユーウツな楽園』 (アミューズブックス)、『此処ではない何処かへ 広山望の挑戦』 (幻冬舎)、『ジーコジャパン11のブラジル流方程式』 (講談社プラスα文庫)、『W杯ビジネス3 0年戦争』 (新潮社)、『楽天が巨人に勝つ日−スポーツビジネス下克上−』 (学研新書)。最新刊は 、『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)。4月末に『辺境遊記』(絵・下 田昌克 英治出版)を上梓。 早稲田大学非常勤講師として『スポーツジャーナリズム論』を担当。早稲田大学スポーツ産業研究所 客員研究員。日本体育協会発行『SPORTS JUST』編集委員。愛車は、カワサキZ1。
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2005年9月28日


地味に忙しい日々が続いている。16日からは二泊で、もてぎにでかけオートバイの日本GPを取材してきた。バレンティーノ・ロッシに話を聞くことができたのだが、確かに人を惹きつける何かを持っている男だった。
その他は、時間を作ってオートバイで三浦海岸に出かけたり、三郷までハンドボールの大崎電気の試合を見に出かけたりもした。関東近辺で蠢いている、九月だった。
さて。
今月十五日発売の『VS.』の売り上げがいいと聞いてほっとしている。
僕は、売れなければ存在価値のない男性総合週刊誌で働いていた。いい記事を書くことはもちろんだが、売れなければならないことを痛切に知っているつもりだ。ハンドボールという一般的にはマイナーな競技を一周年記念号で掲載してくれた担当K氏のためにもこの号は売れて欲しかったのだ。
僕は基本的に自分がやるスポーツが好きだ。
サッカーは高校の頭までやっていたし、未だに週に一回はボールを蹴っている。野球は小学生の時にチームに入っており、卒業した翌年は県大会で優勝する程強いチームだった。そして、オートバイは今も乗っている。
自分が愛情を持っているスポーツのうち、ハンドボールだけはやったことがない。取材する選手たちの信頼を得るためにもやりたいとは思っているのだが、なかなか機会がない。
僕が実際にハンドボールを始めて見たのは、フランスで田場裕也選手のウサム・ニームの試合だった。ニームにある、ハンドボール専用体育館は満員で、その熱気に驚いたことを覚えている。田場選手が活躍したこともあるが、試合を見ていて思わず何度も声を挙げていた。かなり強烈な印象だった。
スポーツというのは、そのアスリートの裏側にどんな人間ドラマがあるのか、それを理解することが見る楽しみに繋がると思っている。単純に競技の面白さはもちろんだが、アスリートの生き様に観る人は感情移入をする。野球の清原和博などがいい例だろう。そうしたドラマを伝えるのが書き手としての僕の役目でもある。
ハンドボールにもドラマ(そして個性)を持った選手がいる。僕が『VS.』で書いた、田場選手、宮崎選手や中川選手はもちろんだが、大崎電気の数少ない社員選手で主将を務める東俊介選手もその一人だ。中川選手のホームページの一角を間借りした、『アズマイズム』(http://konchi.dip.jp/hand/bbs_azuma/bbs-g.asp)はハンドボール界の人気サイトとなっている。
ここで彼は僕と“賭”をした話を書いている。先日のトヨタ紡績戦で東選手が、豊田選手よりも点を取れば、僕が焼き肉をおごる。そうでなければ坊主になるというものだ。
約束の経緯は彼のサイトで書いてあるのとちょっと違っている。
僕が一月のチュニジアで行われた世界選手権を取材して、スペイン代表のウリウスという選手に強烈な印象を受けた。彼は東選手と同じ「ポスト」というポジションである。僕はポストというのは、地味で陽の当たらないポジションであると思っていた。ところがウリウスは、チームの中心として輝いていたのだ。
ハンドボールをやったことのない僕も、もしやるならばポストをやってみたいと思った。この話を田場選手にすると「田崎さんの身長(177センチ)じゃ無理ですよ。190センチはないと」と言われた(別に今から日本代表を狙うつもりはないのだが−−と思ったが…。これは全て世界基準で話をする彼のいいところでもある)。
僕でさえ彼に惹かれたのだから、ハンドボールをやっている子供があのプレーを見たら、ポストをやりたがるはず。それはかつて僕がマラドーナを見て中盤の選手になろうとしたようにだ(残念ながら、自分プレーは全くマラドーナに似ていないのだが)。
今の日本リーグを見に来た子供は宮崎大輔選手や豊田選手のポジションをやりたがるだろう。東選手は、代表のポストとして、子供たちにポストをやってみたいと思わせるようなプレーをするべきではないか。味方のために身体を張るのはもちろんだが、欲しいところで得点を取れる選手、まさにチームの攻守の要がポストプレーヤーであることを示して欲しいと僕は話した。ウリウスと僕が見た東選手の一番の差は得点が取れるか、どうか。得点を取れるポストになってもらうために賭をすることになった(もちろん彼の坊主を楽しみにしていた面もある)。
結果は、東選手が七点、豊田選手は三点。彼の勝ちで終わった。
東選手は、さらに点を取り続け、現時点では日本リーグのフィールドの得点王となっている。彼の得点力は、北京五輪へ向かう日本代表の大きな力になるだろう。僕が多少なりとも彼の発奮材料になれたことは嬉しい。
彼は日本代表が世界選手権の出場権を得ながら、自分自身が代表落ちした屈辱を知っている。また、プロ化の流れの中で、社員選手として理想を掲げて踏ん張っている。
彼のプレーを見る機会があれば、そのドラマを感じて欲しい。
僕が彼に焼き肉をおごったのは九月十五日、日付を越えるまで僕たちは飲むことになり、十六日は彼の三十歳の誕生日だった−−。当然、宴は終わることなく、僕は酒が抜けないまま、スーパー常陸に乗り、もてぎで世界のスーパースター、バレンティーノ・ロッシに会うことになった。僕は、二日続けて愉快で魅力的なアスリートと話すことになったのである。

 

僕がハンドボールを知るきっかけを作ってくれた田場裕也選手。今年一月のチュニジアでの世界選手権の写真である。そもそもの出会いは、当時フランスのモンペリエに所属していたサッカーの広山望選手と田場選手の対談が地元紙で掲載された。広山選手がその時に田場選手と知り合い、その後に僕を紹介してくれた。田場選手から中川選手、東選手、野村選手、羽賀選手に繋がった。偶然の繋がりは重要である。


 

 

 

2005年9月10日


来週十五日発売の『VS.』(光文社)では、“「海外組」 Another Story”というタイトルで、田場裕也選手(仏ウサム・ニーム所属)、日本の中川善雄選手、宮崎大輔選手、三人を軸にハンドボールを描いている。
ハンドボールは、日本では注目を集めるスポーツとはいえないが、欧州では一定の人気を確立している。
五輪出場を逃し続け、企業が手を引く中、彼らは何を考えて、世界をどう見ているのか。
田場を一言で表すならば“闘志”の選手である。欧州でプロになる。そう信じて、誰も歩いていない道を孤軍奮闘し、切り開いてきた。
田場より一つ年上の中川は、田場と違って和を重んじる日本的な選手である。彼もまた日本のハンドボールのために欧州に行かなくてはならないと思うようになった。
二人よりも五才以上若い宮崎は天才肌の選手である。飛び抜けた跳躍力を使ったシュート、明るい性格は人を引きつける。欧州留学の経験のある宮崎は、田場の拓いた道を観察して、自分はどうすれば楽に進めむことができるかという冷静に見ている。
取材は昨年の末から始め、一月の世界選手権、そして五月の欧州出張、今月あたままでの取材になった。今月まで引っ張らなくてはならなかったのは、中川の移籍があったからだ。彼は今シーズンから欧州への移籍を試みていた。しかし、移籍交渉は迷走し、結局は断念することになった。
 三人のハンドボールに対する思いを二十枚ほどの原稿にまとめた。これほどの長さでハンドボールを書いたのは、大手出版社では初めてだと思う。一読に値する原稿だと思うので、是非本屋で買って欲しい。

 

一月、チュニジアで行われた世界選手権にて、宮崎選手。彼のプレースタイルは、敢えて言うならば、少し前のロナウジーニョに例えられる。華麗ではあるが脆弱な部分がある。欧州で戦うことのできる強さを身につけることができるか。彼の課題である。


 

 

 

2005年9月1日


『スポーツ報知』の記事の中では、カワサキのZ1を買ったのだけれど、忙しくて乗る時間がない。バッテリーが上がってしまったと答えた。
実は、バッテリーも上がっただけでなく、点火系がおかしかった。先日、修理に出したのが戻ってくると、調子がいい。
どこか遠出をしたいと思うのだが、上手くいかないもので、もう台風の季節だ。日本は、オートバイにとって気持ちのいい季節というのはそう多くない。夏の暑さが去り、雨の降らないこと、そして身体が空いている。なかなか上手く重ならない。

 


 

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