1968年3月13日京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社。 | |
2013年2月26日
それぞれ作家にはやり方があるだろう。ぼくの場合、単行本の原稿は一度、最後まで仕上げてからバランスを見ながら修整を入れることが多い。全体像を荒く鑿で彫ってから、細部を整えていくような感じである。
今回は元旦から原稿を書き始めた。連載で書いていた原稿はあったとはいえ、単行本には序章から始まって、大きな流れが出来るものだ。そこに雑誌の原稿をはめ込むことは無理がある。すでに書いた原稿もばらばらに分解して、単行本の中に入れることになった。
今回の本には、大量の取材データがあり、文献も山積みになっていた。原稿に疲れると本を読み、また不明な点が出てくると、資料を取り寄せる――。一か月ほどで書き上げる予定が、二か月近くになってしまったのだ。
長編原稿の執筆中は孤独なものである。いつもは気分転換にオートバイのエンジンを掛けて首都高を走ったりしていたのだが、今回は冬。今年の冬は冷え込みがきつく降雪もあった。事務所、国会図書館等などへ、凍えながらオートバイを走らせる程度しかできない。最大の息抜きはオートバイ雑誌を眺めて、旅を夢想することだった。
そしてようやく今日、原稿を書き終えることが出来た。これから細部を整えていくにしても、一息いれることができる。
但し――。
原稿の完成が遅れたため、別の仕事も溜まっている。寒さもあって、まだ遠出はできない。
今年ほど春が待ち遠しいのは初めてかもしれない。