先月、フランスから帰国してから、単行本の入稿校了に追われており、ようやく目処がついた。
単行本のタイトルは「此処ではない何処かへ 広山望の挑戦」。幻冬舎からの発売で、十月九日には店頭には 並んでいるはずだ。表紙は、僕が撮影した写真を使っている。
この本の取材は二年半前に遡る。
出版社を退社した後、2000年の一年間は本を読み、スペインやポルトガルを旅し穏やかな時間を過ごした (外から見ると暢気なものだが、後半は食べていけるのかという焦りがあったのも事実)。
年が明けて、ペルーの大統領選を取材に出掛けた時に広山選手と会った(正式には廣山だが、単行本に合わせて、これからは広の字を使うことにする)。そこから話が始まっている。
パラグアイ、ドイツ、ブラジル、ポルトガルと様々な場所で彼と会い、話を聞いた。
昨年八月にポルトガルのスポルティング・ブラガに移籍するまでは一年近くの時間、試合に出ることができなかった。その間の報道を追っても、関係者が勝手に話していることが書かれているだけで、何が起こっているのか、理解できなかっただろう。
どういった原因があり、彼が何にこだわりワールドカップイヤーを棒に振ったのかが、この本には書かれている。
また、僕がたまたま出版社を辞めて、どのように生きていくのか模索している時に、彼と会った。彼は僕の見ている前で、人間的に大きく成長していった。僕も彼のことを書くことで、変わったと思う。
十も年下ではあるが、彼のような人間と知り合ったことを嬉しく思っている。
実はこの本は一度ずいぶん前に書き上げていた。しかし、決まっていた出版社と折り合わず、今年の四月の段階ではお蔵入りになる可能性もあった。困っている僕の相談に乗ってくれた、先輩のノンフィクションライターである一志治夫氏が、幻冬舎の茅原氏を紹介してくれた。
茅原氏は、丁寧に原稿を読み、助言をくれ、一度書き上げた原稿は、全くというほど書き換えることになった。
この本を書くにあたって、取材のために世界各国を訪れている。その時々で記事を書いている各雑誌の担当者には無理をきいてもらってきた。
広山望という被取材者はもちろんだが、こうした人とのつながりによって、一冊の本にまとめることができた。本名の他にペンネームでも本を出しているが、僕にとって、これまでで一番大事な本である。そして、これからも本を出していくだろうが、一番印象に残る本であることは間違いないだろう。
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