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疾走ペルー 最近の仕事っぷり
キューバ カーニバル
     
  田崎健太Kenta Tazaki......tazaki@liberdade.com
1968年3月13日京都市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部など を経て、1999年末に退社。サッカー、ハンドボール、野球などスポーツを中心にノンフィクションを 手がける。 著書に『cuba ユーウツな楽園』 (アミューズブックス)、『此処ではない何処かへ 広山望の挑戦』 (幻冬舎)、『ジーコジャパン11のブラジル流方程式』 (講談社プラスα文庫)、『W杯ビジネス3 0年戦争』 (新潮社)、『楽天が巨人に勝つ日−スポーツビジネス下克上−』 (学研新書)。最新刊は 、『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)。4月末に『辺境遊記』(絵・下 田昌克 英治出版)を上梓。 早稲田大学非常勤講師として『スポーツジャーナリズム論』を担当。早稲田大学スポーツ産業研究所 客員研究員。日本体育協会発行『SPORTS JUST』編集委員。愛車は、カワサキZ1。
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2002年6月27日


今日は、東京国際フォーラムで行われた写真家、大森克己氏の講演会に出かけた。
大森さんとは、週刊誌の編集をしている時に知り合った。昨年のキューバの本の出版パーティにも来てもらった。僕の尊敬している写真家の一人である。
今回の講演会は写真集『Very Special Love』や雑誌『Switch』で連載している『青空』で掲載した写真をスライドで映写しながら大森さんが説明を加えた。その中でいくつかの写真は、さすがと思うものだった。一応、僕も写真は撮る。キューバに一緒に行った写真家の横木さんに褒められたこともあり、自信がなくはない。しかし、今回見た写真の幾つかは僕は絶対に撮れないと思った。いや正確に言うと撮る執念はないと感じた。
昨日、埼玉で行われたワールドカップの準決勝ブラジル対トルコ戦の帰り。僕は大宮から京浜東北線で秋葉原、秋葉原から総武線に乗り換えようとした。秋葉原の駅で、トルコの赤と白の国旗を顔に描き、国旗をマントのようにまとった外国人男性二人が迷っていた。英語で行き先を尋ねると、一人は市ヶ谷、一人は新宿に向かうと答えた。僕と同じ方向なので、付いてくるように言った。男たちはかなり酒を飲んでいるようで目が泳いでいた。
「今日は勝てたんだよ」
一人の男は泣いた後のようだった。
僕は意外だった。トルコは確かに強い国だが、トルコの人々が本気でブラジルに勝てると思っているとは思っていなかった。
「ブラジルは大したことはなかった」
ともう一人の男は悔しそうに唇を噛んだ。 決勝トーナメント一回戦て日本はトルコに0対1で惜敗した。しかし、勝たなくて良かったと思った。日本代表がもし勝ち抜いていて、この日ブラジルと準決勝で当たったとする。そこで、1対0で負けたりしたら、日本は「善戦」と大騒ぎするだろう。悔しいどころか大喜びするだろう。
正直なところ、僕だって同じだ。
だから、トルコが僅差とはいえ、日本に勝ったのは正しかったのだ。やけ酒をあおって泣いている彼らの姿は、どんな言葉を尽くすよりも雄弁に語っていた。
僕は写真を撮りたいと思った。しかし……。ワールドカップのスタジアムは妙に警備が厳重だ。入り口のX線検査では、カメラをいちいち鞄から取り出さなくてはならない。そのため、いつしか銀塩カメラを持ち歩かないようになっていたのだ。仕方がないと僕は諦めた。
もちろん僕は物書きで、写真家の大森さんに張り合う必要はない−−のだが性分として悔しく思ってしまうのだ。

大森克己氏の写真集『Very Special Love』

 

 

2002年6月14日


先月末、日本に戻った翌日に横浜まで出向き、ワールドカップの取材パスを手に入れた。翌日は緑色のユニフォームを着たアイルランド人たちを満載した新幹線で新潟へ。日本での開幕戦、アイルランド対カメルーンを取材した。その後、埼玉、横浜、茨城などに足を運んだ。
ワールドカップ期間中とはいえ、通常の仕事はある。移動の時間がかからない関東圏の試合を中心に取材申請していた。ところが、関東圏とはいえ、都心に住んでいる僕にとって一番近い横浜でおおよそ片道一時間。茨城に至っては、一度成田空港まで行き、そこからメディア用のシャトルバスを使って、片道三時間。試合開始の一時間前にはスタジアム入りしなければならないので、試合時間を入れると九時間は拘束される。一日が完全につぶれてしまう。
今週は、関東圏を出て西へ。静岡(カメルーン対ドイツ戦)で一泊して、大阪(イングランド対ナイジェリア戦)入り。金曜日の今日、日本対チュニジア戦があるので、そのまま大阪に居続けていた。
長時間サッカーに拘束されているので、移動時間まで惜しい。成田エキスプレス、新幹線の中で原稿を書いた。また、どうしても食事の時間が不規則になる。昼間の15時半の試合ならばいいが、20時半開始の試合だときちんとした食事をとる時間を逸することが多い。
会場でよく会う旧知の李春成さんは「毎日スタジアムのプレスセンターで売っている鮭のおにぎりを食べているよ」と苦笑いした。僕も同じようなものだ。

長居スタジアムにて


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